August 04, 2004

活動報告書 ’03apr-nov

世田谷区立幼稚園存続運動へのご協力のお礼、及びこれまでの活動報告 

拝啓
皆様におかれましては、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、昨秋、世田谷区立幼稚園の存続を求める陳情に多くの皆様からご賛同を受け賜り、46,659筆の署名とともに、区長・区議会・教育委員会に陳情書を提出することができました。また、活動費用も皆様方からカンパをいただくなど、当会へのご理解とご協力に心より感謝申し上げます。
 早いもので、当会が立ち上がり、6ヶ月が経ちました。「対話重視」「超党派」を掲げ、議員折衝、教育委員会事務局との懇談を重ねて参りましたが、残念ながら今だ、区長との懇談は叶いません。しかし提出した陳情書は区議会文教委では、相当数の会派から理解を頂き、現在も区政の最重要課題の一つとして、論戦が繰り広げられ、今後も緊迫した展開が予想されます。引き続き、皆様方からの、区立幼稚園の存続を願う父母の会への温かいご支援ご協力を賜りますれば、幸いに存じます。
                                     敬具 (平成16年2月)

 
区立幼稚園問題の経過
区長発言
【下馬幼稚園の廃園】世田谷区教育委員会は1996年9月、区立下馬幼稚園の98年度入園募集の中止を通達しました。反発した保護者、区民は「下馬幼稚園を守る会」(望月由美子代表)を結成し、下馬幼稚園存続を強く要求。約1万7000人の署名を添え、請願書を提出しました。しかし区側は「世田谷区の幼児人口増加は望めない」などとして応じず、結局、幼稚園は廃園に追い込まれました。
【熊本区長が初当選】2003年4月、全国各地の自治体で統一地方選が一斉に行われました。世田谷区では、大場啓二前区長の任期満了に伴う区長選が実施され、無所属で出馬した熊本哲之・元東京都議会議長が初当選しました。

《区長選結果》        
当 69926票 熊本 哲之 無新
  68753票 水間 賢一 無新
  45463票 鈴木 義浩 無新
  28790票 杉村 佳信 無新
  28729票 笹尾  淑 無新
投票率 40.62%

【熊本氏の公約】熊本氏は区長選に先立ち、自らの公約を「私の目標」と題して発表しました。下記のように当選後は区立園廃園に着手する意欲を示しました。

《私の目標》…ホームページより抜粋             
区立幼稚園11園を廃止します
「区立幼稚園は私立幼稚園が不足した時代、これを補完するために設置したものですが、少子化が進んだ現在、私立幼稚園のみで十分に対応できますし、むしろ私立幼稚園の経営を圧迫しています。私はこの11園を早急に廃止し、浮いた財源を利用して(区立)小、中学校の普通教室にエアコンを設置し、子どもたちの勉強環境を改善します」

【廃園検討表明】熊本区長は6月11日に開かれた定例区議会の召集挨拶で、区立幼稚園の今後のあり方について「役割と機能の見直しの視点に立ち、区立幼稚園廃止も検討する」と述べ、廃園への意欲を表明しました。
 世田谷区議会では、下馬幼稚園廃園問題が起きる以前から、自民党を中心に区立園廃園を求める声が上がっていましたが、行政トップの区長自らが廃園検討に言及したのは、熊本区長が初めてです。
 こうした動きを受け、毎日新聞は翌12日付朝刊の都内版で区長発言を報道。区立園保護者らの間に波紋が広がりました。保護者からは「区立幼稚園を今潰さなければいけない理由はどこにあるのか」「行財政改革や民業圧迫解消のために区立園を犠牲にすることは許されない」などの声が相次ぎました。

  民業圧迫
役所のサービス事業の影響で、民間の経営が不振に陥ったり、伸び悩んだりする現象。小泉純一郎首相は、この民業圧迫を理由に郵政三事業の民営化を提唱し、大きな国政課題となっている。

会発足へ
【世幼Pの反発】熊本区長の区議会発言を受け、世田谷区立幼稚園PTA連絡協議会(世幼P)は7月7日付の会報「世幼P連だより」で、区立幼稚園の存続を訴えました。この会報は、理由として①経済状況が厳しくなっている中、誰もが安心して通える②主体的な遊び(自由保育)を大切にしながら、園児1人1人が平等に扱われる③障害児と健常児がともに仲良く遊べる-などを挙げた上で「区立園の存続と充実を引き続き行政にお願いしていく」と、決意を表明しています。
 さらに世幼Pは翌8日、熊本区長と小野正志教育長にそれぞれ、廃園検討表明の真意を質す質問書を提出しました。
【発足への動き】世幼Pの動きに対し、区教育委員会は同月15日、世幼P役員と各園PTA会長との懇談会を開催。区教育委の佐藤正広・教育委員会事務局参事が、世幼Pの質問書に対する回答を示しました。
 佐藤参事はこの中で、区立幼稚園の運営に対する熊本区長の意向について「廃止を前提に検討している」と説明し、区長が廃園に強い意欲を持っていることを明らかにしました。区長の姿勢に反発した世幼P側はこの直後に、各園PTA有志と協議し、区立幼稚園存続を掲げる区民団体を発足させることで一致。会の名称を「区立幼稚園の存続を願う父母の会」とするほか、会の代表世話人に旭幼稚園PTA副会長の斎藤由美子を選出しました。
 区民団体を発足させたのは、保護者らが「意思決定プロセスが煩雑な世幼Pより、機動力のある任意団体に活動を委ねた方が運動はスムーズに進む」と考えたところに最大の理由があります。会立ち上げに際しては、世幼P役員や各園PTA関係者が相次いで自主参加の意思を表明しました。

     世幼P
◇せようぴ◇世田谷区立幼稚園PTA連絡協議会の略称。区立幼稚園全11園のPTAが交流、親ぼくを図るための組織。区立園に通園している園児の保護者全員が会員となっている。世幼Pの役員会は8人の役員で構成。役員はいずれも、各園の保護者が担当している。世幼Pは、規約上は教育委員会の影響を受けない独立組織である。

【区立幼稚園の存続を願う父母の会】保護者有志らは8月3日、設立趣意書を全会一致で採択、区立幼稚園の存続を願う父母の会(存続の会)を発足させました。
 設立趣意書は、区立幼稚園を「未来を担う子どもたち、わが子の成長を願う保護者たち、多くの地域の方々にとって、かけがえのない共有財産」と位置付けた上で、3つの運動方針を旗印に掲げ、存続と発展の実現を謳っています。
【存続の会の仕組み】区立幼稚園の存続を願う父母の会は、会の基本路線を明記した設立趣意書とともに、事実上の会則にあたる申し合わせも採択しました。
申し合わせは、存続の会を、各園有志の会の合議機関と位置付けています。それぞれ独立した団体である有志の会が会合で意見を述べ、多数決を通じて「オール世田谷」としての意思統一を図るというのが、会の意思決定プロセスの基本的な姿です。大げさに言えば、世界各国で構成する国連と似たような仕組みとしています。各園有志の会はそれぞれ独自の活動をしつつ、足並みをそろえられるところは存続の会として運動を一本化するという形です。
 存続の会の大きな特徴は、超党派を掲げている点にあります。廃園推進派の区議会会派とも、廃園反対の会派とも、対等に対話する姿勢を貫く方針を明らかにしています。特定会派に依存した運動は行わず、自らの知恵と工夫をフルに生かすことで、より多くの区民の理解を得るのが目的です。

《3つの運動方針》
① 全ての家庭に門戸を開く区立幼稚園を守ろう 
② かけがえのない地域コミュニティーとしての区立幼稚園を守ろう
③ 私立幼稚園と手を携えながら、子どもたちの未来を育む区立幼稚園を守ろう


◆ 区立幼稚園の存続を願う父母の会・世話人名簿
              (H16年1月現在)
名前 幼稚園
代表世話人 斎藤由美子 旭
副代表世話人 金沢 直美 松丘
世話人 高橋百合香 旭
世話人 河奈辺裕子 砧
世話人 坪井 理恵 給田
世話人 森田 亜貴 桜丘
世話人 中根 美代 多聞
世話人 内田 万里 中町
世話人 西山夕紀子 羽根木
世話人 小池 明枝 三島
世話人 大垣真理子 八幡山※
※ 八幡山はオブザーバー参加。塚戸は空席

議員折衝
【区議との折衝】存続の会は8月上旬から、西山夕紀子世話人(羽根木幼稚園)らを中心に、区議会各会派との議員折衝を進めました。
 区長が目指す廃園構想を退け、区立幼稚園を未来につなぐためには、何よりも区議会で多数派からの支持を得なければなりません。市民運動からは、街宣活動、デモ、シュプレヒコールなどを多用した「反対運動」を繰り広げているとの印象を受ける場合もありますが、存続の会は、飽くまでも区立幼稚園の存続という「目的の達成」を優先する立場から、各会派の説得に軸足を置いた運動に踏み込みました。
 その結果、区議会第2会派の公明党が「全園存続は難しいが、全園廃園には反対だ」と、一定の理解を表明。民主党、生活者ネットワーク、共産党、社民党の各会派も「区長は区民の意見をしっかり聞くべきだ」などと、そろって廃園計画に批判的な姿勢を示しました。1人会派の無党派市民、反政党・改革派、レインボー世田谷各派及び無所属議員も、こぞって理解を表明しました。
 これに対して最大会派の自民党は、存続の会との折衝に際し「区立園を廃止して私立幼稚園に委ねる方針をすでに決めている」と強調。廃園構想を見直す考えがないことを明らかにしました。宍戸教男区議会議長も、懇談には応じたものの「民間にできることは民間に任せるべき」として、区立幼稚園存続は難しいとの見方を示しました。
 せたがや政策会議は「この問題はあらゆる角度から検討すべき」と述べるにとどめています。

◆各会派議席数

【区議会の議題に】存続の会の度重なる議員折衝の結果、各会派の区立幼稚園問題に対する関心は高まり、9月定例議会ではほとんどの会派が同問題を議題に取り上げ、区長の姿勢を質しました。
 これに先立ち、区教育委員会の中村弘教育次長は8月20日に開かれた存続の会との懇談で、熊本区長の意向について「廃園を一つの選択肢として検討している」と説明。「廃園を前提としている」と強調していた03年7月時点の強硬姿勢から、かなりトーンダウンしたことを示唆しました。
 こうした熊本区長の姿勢の変化について、野党系議員から「区立幼稚園を想う保護者、会のメンバーの運動の成果ではないか」との声も上がっています。
【署名活動】存続の会は同時に、陳情書の提出に向けて署名活動を開始。精力的な活動を展開し、短期間であるにもかかわらず、最終的には計46659筆という記録的な数に達しました。
 政党、労組などの既存団体に一切頼らず、メンバーが文字通り、近所や親せき、友人に当たる地道な署名運動が功を奏した形となりました。

◆廃園計画に対する各会派の姿勢

慎重派 31議席 公明、民主、生ネ、共産
          社民、無党派、反政党
          レインボー、無所属
推進派 16議席 自民
不 明  4議席 政策会議


陳情書
【陳情書作成】第3回定例区議会(9月)での区長の召集挨拶でも、区立幼稚園廃園問題が取り上げられていたことを受け、私たち存続の会は陳情書を提出することにしました。陳情書に何を盛り込むか、また、各分野の優先順位や表現について度重なる議論の末、メンバーの共通認識を組み込む形でとりまとめることができました。
【陳情書の3要求】存続の会は10月6日、存続を願う多くの保護者と共に、熊本区長、宍戸議長、野原明教育委員長にそれぞれ陳情書を提出。野原委員長宛ての陳情書を小野教育長に手渡した様子は、MXテレビのニュースで報道されました。毎日新聞も7日付朝刊の都内版で、二段見出しで報じました。
 陳情書では、具体的に①区立幼稚園の存続②平成17年度(2005年度)の全園での入園募集実施の確約③教育関係者、保護者らで構成する協議機関の設置-の3要求を掲げ、熊本区長らの理解を求めました。
「①区立幼稚園の存続」を求める理由として、経済的観点からのみならず、子供達が自発的に、様々な環境に働きかけ、自らの考えで工夫し自由に遊ぶ中で、社会生活を身に付けていくように指導していく保育(自由保育)や、健常児と障害児が、ともに遊び、学ぶことができるノーマライゼーション(統合教育)の貴重な実践の場であることなどを、区立幼稚園の大きな特徴として挙げました。

平成17年度の入園募集問題
世田谷区立幼稚園への子どもの入園を希望している世帯が、平成17年度(2005年度)入園募集実施を早急に確約するよう区側に求めている問題。区立幼稚園は4歳児から受け入れる2年保育制を採用しており、現在2、3歳になる子どもの場合、2年後の平成17年度に入園することになる。ところが、廃園検討を打ち出した区側は04年1月現在、平成16年度(2004年度)入園募集実施しか保証しておらず、17年度以降も実施するかどうかは不透明な情勢となっている。このため、2、3歳児の保護者の間からは「廃園の恐れがある区立幼稚園への入園をあと1年待つのは厳しい。3年制の私立幼稚園に今入れるしかないのでは」と不安視する声も上がっており、区側の対応が注目されている。

【委員会審議】こうした情勢下で宍戸議長は、存続の会が提出した陳情書を、区議会文教委員会に付託する方針を決定。これを受けて文教委は11月12日、斎藤由美子、金沢直美、西山夕紀子、の世話人3人による趣旨説明と質疑応答を行いました。3人は区立幼稚園存続に向け、それぞれ区議会の協力を要請しました。
【継続審議】これに対して文教委は趣旨説明後、陳情書の今回の定例区議会での採決を見送り、継続扱いとすることを決定しました。「継続」といっても、これから先、この陳情について議会や委員会でもう1度審議されるということはないそうです。ですが、教育委員会からは「皆様の陳情の内容は理解しました。今は事務局レベルで整理している段階のため、すぐに判断をすることができません。しかし今後も区民の皆様からの意見・要望を聞いて検討作業を進めていきたいと思っています」という野原委員長の回答を得ました。また複数の議員が「この問題は非常に重要な問題なので、これから先も折りに触れて検討していきたい」というようなお話をされています。

広がる輪【佐藤学教授との出会い】存続の会は議会対策を積極的に進める一方で、自らの区立幼稚園存続運動を理論面から下支えしようと、03年8月ごろから、有識者を招いての講演会開催の検討に入りました。過去の新聞記事に当たったところ、佐藤学・東大大学院教育学研究科教授が公立幼稚園の民営化を進める全国自治体の姿勢を批判したコラムが見つかり、これを機に佐藤教授に講演を要請することにしました。
当初は佐藤教授の自宅住所、メールアドレス、電話番号が不明だったことから、勤務先の研究室に講演依頼の手紙を送付しました。これに対し、佐藤教授は存続の会宛てに、講演を快く引き受ける旨のメールをくださり、講演会の実現に向けた取り組みが一気に本格化しました。

佐藤学教授の紹介  
学校教育のあり方を専門的に研究している教職開発学の第1人者。子どもと学校の関わり、教師が抱えるジレンマなどの実証研究から、諸外国の学校教育システムの比較研究まで、対象分野は幅広い。著書は「教師たちの挑戦」(小学館)、「“学び”から逃走する子どもたち」(岩波書店)、「子どもたちの想像力を育む」(東大出版会)ほか多数。最近は自治体、市民団体などからの講演依頼が相次ぐなど注目されており、NHK番組「NHKスペシャル」にも出演した。

【講演会の開催】佐藤教授の快諾を受け、存続の会は講演会を11月15日に開催することに決定。当初は適当な会場が見つからず、場所選定に大変苦労しましたが、会メンバーの努力によって上馬高齢者集会所の多目的ホールを押さえることができました。
 講演会当日の役割分担については、世話人全員で相談した結果、①司会②佐藤教授の送迎③受付④アンケート作成・集計⑤駐輪場整理⑥招待状作成・送付⑦看板作成⑧ポスター・ビラ作成⑨招待客案内⑩音響・録音・録画―などきめ細かく割り振り、担当したメンバーそれぞれが精力的に取り組みました。
 佐藤教授を招いての講演会は、予定通り11月15日に、保護者や区民ら約150人を集めて開かれました。講演会には、存続の会の活動に理解を示している公明、民主、生活者ネットワーク、共産、社民無党派市民、反政党・改革派のほぼ全会派の区議が来賓として出席したほか、自民党の石塚一信区議も、考え方の違いを超えて参加、佐藤教授の講演に耳を傾けられました。
【佐藤教授の訴え】佐藤教授は講演の中で、幼児教育と行政の関わりについて「自治体が幼児教育を(住民への)サービスと位置づけるのは間違い。はっきり責任と受け止めるべきだ」と述べ、行政は責任を持って幼稚園教育の充実・発展をはかる義務があるとの考えを強調。その上で「今ある世田谷区の区立幼稚園を大切にしてほしい。一度廃園に追い込まれたら復活させるのは難しい」と訴え、区立幼稚園存続を求める保護者、区民に全面的に協力する考えを明らかにしました。 質疑応答では区議を含む出席者3人が質問に立ち、活発なやり取りを展開。佐藤教授が、ほぼ全会派の議員が顔をそろえているのを見て「感動した。ここにいらっしゃる先生方で幼児教育について考える超党派の議員連盟を立ち上げてはいかがですか」と呼びかけ、会場は拍手に包まれる一幕もあり、講演会は大いに盛り上がりました。
【広がる輪】講演会には、世田谷区と同じように区立幼稚園廃園問題を抱える大田区、杉並区、三鷹市などの保護者団体の方々も出席。今後は自治体の垣根を越えて互いに協力し合うことを確認しました。杉並区では区側の廃園計画の凍結に成功し、三鷹市では廃園に追い込まれた区立幼稚園復活運動が始まるなど、置かれた環境はそれぞれ異なりますが、「公立の幼児教育が充実してこそ、子どもたちの将来の展望が開ける」との思いでは、全員が一致しています。私たちとしては、徐々にではあるけれども、確実に広がり始めた連帯の輪をしっかり育みながら、世田谷区の「明日の扉」を開いていきたいと考えています。

今後の展望と課題 
区立幼稚園の存続を願う父母の会が発足して、早6ヶ月が経ちました。
熊本哲之区長の廃園検討発言をきっかけに表面化した区立幼稚園問題は、会のメンバーの献身的な努力と、「区立幼稚園の灯を消してはいけない」と願う多くの区民の方々の訴えによって、区側が以前よりも柔軟な姿勢を示すなど、新たな局面を迎えています。今日まで会の活動を温かく見守り、支持していただいた多くの方々に改めて感謝の気持ちを表したいと思います。
 区議会に提出した「区立幼稚園の存続を求める陳情書」は、今後の課題として「継続扱い」となり、私たちの運動は今だ道半ばではありますが、議会に一石投じた形となりました。 
熊本区長の区議会答弁も、区立幼稚園の廃園検討を撤回するには至っておらず、年明け以降も、この問題をめぐる緊迫した展開が続くことが予想されます。
 そうした情勢の下で、私たち存続の会としては、短期的ビジョンと長期的ビジョンの二つの視点に立ち、盛り上がりを見せている存続運動をさらに発展させていく決意です。
 私たちは短期ビジョンとして、すでに陳情書でも掲げた平成17年度の区立幼稚園入園募集実施の確約を強く求めていく考えです。「近い将来に区立幼稚園が廃園に追い込まれるのではないか」とする保護者らの不安は、区側の確約なしに払拭されることはありえません。そして、そのための重要なステップとして、熊本区長との直接対話の実現を引き続き区側に要望していく所存です。
 さらに、私たちの考えだけでなく、多くの有識者、保護者、区民の方々の多様な意見を世田谷区の教育行政に反映させるため、区立幼稚園の今後のあり方に関する協議機関の設置も求めていく考えです。
 私たちはそうした目前の課題に対処しつつ、さらに長期的ビジョンとして幼児教育、公立教育全般についても勉強していきたいと考えています。
区立幼稚園問題の解決を目指す中で、私たちの運動によって子どもたちをとりまく環境がより良いものとなるよう願っています。
 皆様のさらなるご理解とご協力をよろしくお願いします。

区立幼稚園問題の年表                                     
平成15年12月1日現在 

H15.4.27   熊本哲之元都議会議長が世田谷区長選に初当選。公約の一つに「区立幼稚園の廃止」
    6.11   熊本区長が定例議会で区立幼稚園の廃園検討を表明
    6.12   毎日新聞が区長発言を報道。区民の間に波紋広がる
    7. 8   世幼Pが区長に質問書を提出し、真意を質す
    7.15   区教育委学務課が世幼P関係者と懇談。熊本区長の真意について「区立園の廃止を
           前提に検討している」と回答する。世幼P側は反発
      同日   世幼Pと各区立園保護者が懇談。区立園を守る市民団体を設立することで合意
    8. 3   「区立幼稚園の存続を願う父母の会」が発足。齋藤由美子が代表世話人に就任し、
           設立趣意書を全会一致で採択
    8. 4   毎日新聞が「父母の会」発足の記事を掲載
     同時期   「父母の会」が区立園存続を求める署名活動を開始
           区議会各会派との議員折衝に着手
           宍戸教男区議会議長と懇談。議長は「民間でできることは民間で」と述べ
           区立園存続に消極的姿勢を示す      
    8.20   区教育委の中村弘教育次長らと初懇談。熊本区長の意向について「区立園廃園を
           選択肢の一つとして検討する」と述べ、従来よりも態度がわずかに軟化したことを
           明らかにする
    9. 8   区教育委の中村弘教育次長らと2回目の懇談。H16年度の入園児の卒園までは
           保障するものの、H17年度の入園募集実施の確約はできないと回答
    9.17   区長が定例議会で再び廃園検討を表明。保護者ら反発
   同時期   各会派が相次ぎ区立園問題を取り上げ、区長を追及。公明、生活者ネット、社民、共産
         反政党改革派、無党派市民といった多数会派が廃園方針に疑問を投げかける
10. 6   46659筆の署名とともに、区立幼稚園の存続を求める陳情書を区長、区議会議長、
           教育委員長にそれぞれ提出。受理される
  11.11   区教育委の審議で、陳情書について主旨説明と質疑応答
  11.12   区議会文教委で主旨説明と質疑応答。文教委が陳情書を採択せず、「継続」扱いとする
          ことで合意する
  11.15   佐藤学東大大学院教授(教育学研究科)を講師に招き、講演会を開催。区民ら150人
以上が出席したほか、区議会各会派の議員がそろう

区立園問題をめぐる各会派の対応

会派     議席数 基本姿勢 発言
自民党 16 全園廃園を推進 区立園の役割は終わった。私立幼稚園に任せるべき
公明党 11 全園廃園に反対 区立園の役割を考慮せよ
民主党   6 早急な廃園に反対 将来は幼保一元化を検討すべき
生活者ネット  5 早急な廃園に反対 保護者らを交え議論を尽くせ
せたがや政策会議 4 ?        あらゆる角度から検討すべき
共産党   3 廃園に反対      区が子育て支援に責任を持つべき
社民党   2 廃園に反対      保護者の意見に耳を傾けよ
反政党   1 廃園に反対      区立園と私立園の共存を
無党派   1 廃園に反対      区立園には今の時代に即した使命がある
レインボー   1 廃園に反対      保護者らの不安を考えよ
無所属・青空氏1 廃園に反対      区側は説明責任を果たしていない
平成15年12月現在

    
陳情書に対する各会派文教委員の対応会派 姿勢 コメント
自民党 継続 会派としては陳情書採択に賛成できないが、(入園料値上げなど)「税金の使い道」まで踏み込んで行政との対話を目指す保護者の姿勢には感動した
公明党 継続 全園存続は難しいが、全園廃園にも反対。区は、障害児教育を含めた幼児教育にもっと力を入れよ。幼保一元化も視野に、早急にたたき台を作ってほしい
民主党 一部
採択   区に「平成17年度入園募集の確約」を求める項は支持できないが、区立園存続要求と協議機関設置要求には賛同できる
生活者ネット 趣旨採択 会派としても、区立園問題に関する協議機関の設置は必要と考えている。区は、保護者らをメンバーとした検討委員会を作るべきだ
せたがや政策会議 不採択 「平成17年度入園募集の確約」は(区長が持つ)同年度の予算編成権を制約することになり、不適切。幼児教育に関する教育委の検討結果を見て判断すべき
レインボー世 趣旨採択 幼児教育分野では今後、区立幼稚園など公的機関の重要性が増すだろう。陳情書の意を酌みたい
無所属・青空氏 趣旨採択 「区立園存続のためなら入園料、保育料の多少の値上げは構わない」とまで言っている保護者の気持ちを酌みたい
                        平成15年11月12日、区文教委での各会派発言

 私たちの陳情書は11月12日の区文教委員会で審議されました。この中で民主党、生活者ネットワーク、虹、の3会派と無所属議員1人が「趣旨採択」または「一部採択」を提案、陳情書を支持したのに対し、最大会派の自民党、第二会派の公明党は「継続審議」を主張しました。また唯一、せたがや政策会議が、陳情書を「不採択」とするよう求めるなど、各会派の意見は分かれました。(上記表・参照)
 これを受けて同委員会の平山八郎委員長は、世田谷区議会の慣習に基づき陳情書を「継続審議」とする議事運営方針を提案しました。しかし、民主党委員が「継続扱いはおかしい」と委員長判断に反対したため、平山委員長は、自らの委員長判断の是非についての多数決を各委員に求めました。
新田(自)、石塚(自)、岩本(公)、栗林(公)、田中(政)の5委員は、「継続審議」とした委員長判断を支持し、陳情書の審議結果は5対4で「継続」となりました。

【陳情書の要旨】
(1) 世田谷区民にとってかけがえのない区立幼稚園の存続を求めます
(2) 当面の課題となる平成17年度入園募集については、遅くとも今年10月末までに区立幼稚園全園(11園)での実施を確約するよう強く求めます。
(3) 区立幼稚園の今後を検討する協議機関の設置をもとめます。
委員に区立幼稚園関係者、私立幼稚園関係者、保護者、有識者らを起用し、区長に答申することとします

              


  

 


| | Comments (0) | TrackBack (0)